AICブログ

公認サークル「Ange Illustration Circle」のブログ

アンジュ・ヴィエルジュの大会レポートや今日のカード考察、サークルメンバーの描いたイラストなどを記事にしていきます。

【アンジュSS】「そよ風の軌跡」Chapter.3

Write:ノワール

登場人物
エトワール・グレイアーツ
OCeto

Chapter.3


淡い翠色の光の中を進んでいくと、しっかりとした大地の感触が伝わってきた。もうハイロゥを抜けたのだろう。
眩しい太陽の光は、グリューネシルトのそれよりも暖かく、少し力強くも感じられた。
「ここが…青の世界……。」
まずエトワールはその自然の多さに驚いた。グリューネシルトでは長引いた戦いと進行した異変の影響で、自然というものが少なくなっていた。
それに比べて青の世界「地球」は、文献で目にしたもの以上の自然で溢れていた。
(まずは生徒としての登録申請をしなきゃいけないかな…。)
"学園"と呼ばれているのだから、そのような申請は必要だろうと思い立ち、エトワールは目の前に見える校舎施設―「青蘭学園」へと向かった。

――――――――

「――はい、これで生徒登録は完了です。お疲れ様でした。」
事務室で青蘭学園での生徒登録を済ませた後、エトワールは学園内をあてもなく歩くことにした。今後過ごす場所を少しでも把握しておきたかったのだ。
時間帯は丁度昼休み、青蘭学園の廊下は多くの生徒で賑わっていた。
よく見てみると、耳が長い「エルフ」、背中に翼を抱いた「天使」、コードらしきものが見え隠れしている「アンドロイド」など、明らかに違う世界から来た生徒も多く見かけられる。
この学園が、複数の異世界からの住人の交流の場でもあることが見て取れるようだった。
特談どこに行こうというわけでもなく、学園を半ばさ迷い歩くと形容しても差し支えない様子で歩いていると、ふと学園の生徒に呼び止められた。
「そこの貴女、もう午後の授業が始まるわよ。」
呼び止められて振り返ると、眼鏡をかけた生徒が立っていた。左肩には何やら緑色の腕章のようなものが着けられている。その生徒が言うにはどうやら昼休みの終わりが近いらしい。
「…今日初めてここにきて、さっき登録を済ませたばかりなんです。」
「なるほど、転入生ね。」
察した顔で答える目の前の生徒。見た感じ、普通の生徒というよりはどこか上に位置するような者のように思えた。それこそ、軍の上官のような。
「登録が済んでいるのなら、明日にでも授業が受けられるように教科書などを貰いに行くのを薦めるわ。購買部に行って。」
どうやら明日からでも授業が受けられるらしい。そういえばと、先ほどの登録時に受け取った編入クラスの名簿を思い出す。
「えと…ありがとうございます。そうします。」
「ええ、どういたしまして。教科書を受け取ったら、寮で休んでいるといいわ。」
聞いていて凄く分かりやすい説明で、登録の受付嬢よりもずっと聞きやすく、理解がし易かった。
生徒がその場を離れようとする。すると思い出したかのように再び振り返り、エトワールに訪ねてきた。
「そういえば、名前を聞いていなかったわね。」
自分も名乗っていなかった、と思い返す。軍で散々言われていたことではないかと、心の中で反省をする。
「エトワール…"エトワール・グレイアーツ"です。」
「エトワールね。私は"キヌエ・カンナミラ"。この学園の第一風紀委員会、委員長を務めているわ。」
風紀委員長―。道理で模範的且つ誠実そうな生徒だったと納得した。
すると、そのタイミングで予鈴を告げるチャイムの音が鳴り響いた。午後の授業の開始が近くなっているのだ。
「説明はここまでね。他に何かわからないことがあったら、委員会室に直接訪ねてくるのもいいわ。」
そういって、風紀委員長"キヌエ"はその場を立ち去って行った。

―――――――――

日も沈み、学園での用事を済ませたエトワールは寮の部屋で休んでいた。
明日からこの学園での生活が本格的に始まるのだ。期待とも不安とも受け取れるような動悸を胸に、今日はもう寝ることにした。
(何だろう…私、凄くドキドキしてる……。)
普段は殆ど感じたことのない感情を抱いて、エトワールは眠りに付いた。
学園生活が実りのあるものになることを祈りながら―。

Chapter.2← →Chapter.4:12/1(火)

当サイトで掲載している画像の著作権・肖像権等は、各権利所有者に帰属致します。

⇧ ページトップへ